教育人間学によると、私たち人間の諸能力を十分に発揮して充実した人生を送るためには、「頭」と「手」そして「胸」と「肚(はら)」、4つの諸力をバランスよく調和しながら伸ばしていくことが重要ということです。ここでいう「頭」は知識や情報を習得し、思考力や判断力を鍛えること。「手」は手に職をつけるというような、技術的能力や特技を磨くこと。各種の資格を取ることや、これからはデジタル技術が働き方や人生を左右する大きな力になると見られています。さらに私たちは「胸(胸襟)」を開いて語り合い、ひとと心を通わせる「つながる力」をもっています。人と共感し協力し合う良い人間関係が保たれなければ、それらを社会に生かすことはできません。最後の「肚」は“肚を据えて取り組む”こと。人生の困難な課題に直面しても、何とか乗り越えていく「もちこたえる力」です。失敗や挫折を経験することがあっても、事態を冷静に受け入れることができるのも、この力があってこそです。さまざまな人間的諸力を統合的に生かし、よい人間関係の基礎となる道徳的な能力や資質であり、これを「品性」と呼んでもいいでしょう。品性は善を生む根本的な能力であり、「よりよく生きる力」の源泉です。品性が向上することで、人生を開拓する創造力になるのです。成功・失敗にかかわらず、人生で出会う様々な出来事に独自の意味を見出します。まずは家族や隣人、共に苦しみ共に歓びながら「つながる力」と「もちこたえる力」を培い、懐の深い自分になっていくことを目指したいと思います。